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ミニ情報通信

平成30年度北海道ブロック障がい者雇用セミナーが開催されました。

 去る12月5日(水)午後1時15分から、標記セミナーが「障がい者雇用へ一歩踏み出す」と題して、札幌コンベンションセンター(札幌市白石区)において開催されました。
 このセミナーは、全重協が厚生労働省から受託した「障害者に対する差別禁止及び合理的配慮に係るノウハウ普及・対応支援事業」の一環として開催されたものです。

 当日は、まず最初に、主催者を代表して全重協の栗原会長から開会のあいさつがあり、1)全重協は、障害者が企業の戦力として働くことができるようにするための調査・研究や相談・サポートを行っている、2)障害者と一緒に仕事をすれば、彼らが企業の戦力となることが分かる、3)外国人労働者の受け入れが国会でも議論されているが、人手不足に対応するためには、まず障害者を雇用すべき、4)公務部門における障害者雇用の不足問題について国会で質問を受けた、5)その際、来年末までに国が4,000人の障害者を雇用することになっているが、それにはサポート体制の整備が必要であると申し上げたといった話がありました。

 栗原会長のあいさつの後は、楽天ソシオビジネス株式会社代表取締役副社長の川島薫様から、「障がい者の能力を戦力にする」と題して特別講演がありました。
 川島様からは、1)平成19年に会社を設立した当初は、障害者の頭数をそろえるための採用となってしまい、業務とのミスマッチがある人や周囲との関係性を築けない人が退職してしまった、2)仕事へのモチベーションが低い→人材が育たない→会社が成長しない(業績が上がらない)→社員の給料を上げることができないといった悪循環が続いていた、3)このため、特例子会社としては希有な独立採算制とし、人事評価制度や教育訓練制度を導入することにより、会社の業績が上がれば給料も上がる仕組みとした、4)「自分たちでできる業務を探す」という発想をもって楽天グループ全体を見渡し、業務を切り出してもらう営業活動も実施した、5)グループ適用となっている会社を対象に、「雇用率を満たす人数分の人件費に相当する仕事の依頼がない場合は、ペナルティとして不足分の人件費を支払ってもらう」という仕組みを作った、6)以上により、楽天グループ全体のルーティンワークをアウトソースすることで、楽天グループ各社の生産性向上にも寄与することができた、7)戦力となる社員を育て業績を伸ばすためには、会社の目指すところを共有する「意識の統一」が必要、8)精神障害者については、診断名は同じであっても障害特性はそれぞれ異なる、9)このため、雇用する人の症状の特徴、性格、得意なこと、苦手なことを把握している支援センターの助けが必要、10)採用前に、支援センター等本人を支える組織や機関に登録しているかどうか、本人が信頼している支援者がいるかどうかを見極めることも必要といったお話がありました(川島様のお話の詳細については、こちらの資料をご覧下さい)。

 川島様のご講演の後は、地元北海道で先進的な取組をしている企業の事例発表ということで、NTSプリント工房株式会社代表取締役社長の政野健敏様と株式会社特殊衣料代表取締役会長の池田啓子様から、それぞれお話がありました。
 このうち、政野様からは、1)従業員13名のうち、障害者が8名、2)障害者の内訳は、精神と知的が各4名、3)業務としては、グループ各社から受注した印刷や文書管理を行っている、4)朝礼の際に、その日の仕事のスケジュールを伝える他、「気分調べ」ということで、その日の気分は何%か障害者に聴いている、5)精神障害者には、必要に応じてメンタル相談も行っている、6)これまで身体障害者1名、精神障害者4名が退職している、7)身体障害者については勤怠の状況が悪くなって退職した、8)退職した精神障害者については、同僚に干渉する、私語が多くなるといったようにそれまでと異なる行動をとる等、何らかの兆候が見られた、9)こうした兆候が見られたら会社として対応する必要があるが、会社としてどこまで関わるかも問題、10)家族や支援機関との連携も必要、11)体調が悪くなったら無理をさせないことが重要、12)障害者を雇用する上で、トライアル雇用は非常にいい制度といったお話がありました(政野様のお話の詳細については、こちらの資料をご覧下さい)。
 また、池田様からは、1)従業員176名のうち、60歳以上の者が41名、障害者は29名となっている、2)かつてひきこもりだった若者も雇用している、3)障害者の平均勤続年数は約15年で、最長は29年となっている、4)知的障害者に「社会人としての基本的なマナーや共に働くために周りの人を思いやる優しさ」を教えるためのマナー本を作成した、5)また、「会社と身近な支援者が障害特性について理解し、同じ視点、同じ言葉で伝えていく」ために支援者用のマナー本も作成した、6)これらのマナー本については、入社時の社員教育やジョブコーチ支援に活用している、7)仕事についての障害者の意見・要望を聴き、それを業務に反映させるとともに、家庭内で困っていることや悩みなどについても話を聴き、その解決をサポートするため、年2回すべての障害者を対象に社長自ら個人面談を行っている、8)知的障害者と出会ったことにより会社が発展したといったお話がありました(池田様のお話の詳細については、こちらの資料をご覧下さい)。

 お二人のお話の後は、セミナー参加者によるグループディスカッション(意見交換)が行われる予定でしたが、お二人のお話が白熱して時間が足りなくなったため、当日は、会場の参加者全員とお二人とのトークセッションということで、全重協北海道ブロックの本田理事(株式会社ほくでんアソシエ取締役管理部長)の司会の下、特別講演を行っていただいた川島様も交えて意見交換が行われました。
 このトークセッションでは、「障害者が一般就労する上で身に付けるべきスキルは何か」「障害者を分散して配置している場合の相談窓口はどうあるべきか」「法定雇用率が引き上げられる中で、知的障害者だけでなく発達障害者等も雇用していかなければならないがどうしたらいいか」といった問いかけがフロアからあり、これらの問いかけに対しては、川島様から「採用に当たってスキルは見ていない。体調管理がきちんと行えることや人とコミュニケーションがとれることが重要」「無記名で相談しても、管理者には誰が相談したか分かるような仕組みを活用している」「特別支援学校や支援機関との連携に加えて、採用前の実習も重要」といったコメントがありました。
 また、フロアからは「これまで障害者雇用を続けてきてどんな感想を持っているか」という問いかけもあり、これに対しては池田様から、「知的障害者の人としての魅力を改めて実感した。人手不足の中でも外国人を雇用する前にまず障害者を雇用してほしい」といったコメントがありました。

 今回の北海道ブロック障がい者雇用セミナーについては以上です。
 当日は、最後に全重協北海道ブロックの横堀ブロック長(クリーンリース株式会社専務取締役)から、「今回のセミナーをきっかけとして、障害者雇用に更に一歩踏み出していただきたい」という閉会のあいさつがあり、4時間近くに及ぶセミナーを終えました。