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ミニ情報通信

九州・沖縄ブロック障がい者雇用特別セミナーが開催されました。

 去る11月28日(水)午後1時から、福岡県春日市にあるクローバープラザにおいて標記セミナーが開催されました。
 このセミナーは、当協会が厚生労働省から受託した「障害者に対する差別禁止及び合理的配慮に係るノウハウ普及・対応支援事業」の一環として開催されたものです。

 当日は、まず最初に栗原会長による開会のあいさつと、ご来賓の福岡県福祉労働部新雇用開発課係長の猿渡満様のごあいさつがあり、栗原会長からは、1)国会の参考人として、障害者の雇用問題について意見陳述を行い、障害者はその人に合った指導をすれば必ず戦力になるという話をした、また、2)そうしたことの事例として、障害者の雇用がむずかしいといわれている警備業において、精神障害者を積極的に雇用している企業のことを紹介した、3)近い将来、法定雇用率が2.2%から2.3%に引き上げられ、さらに、常用雇用労働者が100人以下の中小企業も納付金の適用対象とすることが検討されている中で、できるだけ早く障害者を雇用した方がいいのではないかといった話がありました。
また、猿渡様からは、福岡県においても障害者の雇用は着実に進展しているが、求職者はそれ以上に増えている、2)その中でも特に精神障害者が増えているといったお話がありました。

 お二人のごあいさつの後は、人を大切にする経営学会会長の坂本光司様から、『「日本でいちばん大切にしたい会社」の事例から学ぶ』と題してご講演をいただきました。
 坂本様からは、1)企業は人を大切にするためにある、2)日本でいちばん大切にしたい企業大賞の審査基準も、「過去5年以上希望退職の募集や解雇を行っていないこと」や「過去3年以上下請けに不利な取引をしていないこと」に加えて、「過去5年間、障害者の法定雇用率を達成していること」を挙げている、3)精神障害の治療には社会参加や働くことが必要であるという認識に立って、精神科医が障害者のために設立した企業がある、4)「卒業しても就職先が決まっていない生徒を見るのがつらい」と言って会社を立ち上げた特別支援学校の先生もいる、4)法定雇用率の対象となっていないため障害者を雇用していないが、施設で働く障害者が十分な収入を得られるよう、通常の10倍の単価で仕事を発注している中小企業もある、5)上司から毎日叱られても「仕事をして、人からお礼を言われるので幸せ」という障害者もいる、6)神奈川に全盲の子供と障害のない子供を一緒に教育している幼稚園があるが、ここでは、放っておいても必ず誰かが障害のある子供の面倒を見ている、7)障害者の雇用を進めるためには、こうした「ごちゃまぜ教育」を行うことも有効といったお話がありました。
 全国8,000以上の企業を訪問して得られた知見に基づくこうした坂本様のお話は、障害者の雇用を考える上でも大いに参考になるものでした(坂本様のご講演の詳細については、
こちらの資料をご覧下さい)。

 坂本様のご講演の後は、事例報告ということで、九州・沖縄ブロックにおいて早くから精神障害者の雇用に積極的に取り組んでこられた当協会会員の九州地理情報株式会社取締役執行役員・総務部長のM口茂春様と同じくビジネスサポート課課長の仲田勝治様からお話を伺いました。
 同社は、平成2年8月に、福岡県初の第三セクター方式の重度障害者多数雇用企業として設立され、航空写真等を活用した地図情報システムの開発業務等を行っています。
 平成20年5月からは、ワールドホールディングスの特例子会社となりましたが、その頃より精神障害者の雇用が増加するようになり、従来親会社自身で行っていた契約書等の書類の電子化や伝票の金額のチェックといった業務をバックオフィス業務として切り出すことにより親会社と特例子会社との共存が確立されました。
 当日は、精神障害者が多く配置されているビジネスサポート課の取組をご紹介いただきましたが、1)6時間と8時間の勤務体系があり、個人の状況と能力に応じた働き方の選択ができる。また、6時間から8時間勤務へのステップアップも行っている、2)職場定着へのサポートとして、必要に応じ支援機関や医師、家族等と連携をしている、3)管理者は、部下の体調不良や問題の早期発見ができるよう、障害者に目が行き届くようオフィスと配席を考えている、4)デスクワークが多いため、気分転換ができるよう、休憩スペースを確保している、5)特に気分の浮き沈みが大きい精神障害者のために社外に一人用の休憩スペースも設けている、6)突発的な指示を口頭だけでなく文字でも伝えられるよう、社内チャットシステムを活用している、7)曖昧な表現を排除した指示書・手順書やチェックシートを整備し、作業手順が分からなくなったときに、自分で振り返って確認できるようにしている、8)管理者は予定を早めに明示するとともに、指揮命令系統を順守するようにしているといった同社の取組は、これから精神障害者を雇用しようとしている企業にとって大いに参考になるものでした(M口様と仲田様のお話の詳細については、こちらの資料をご覧下さい)。

 M口様と仲田様の事例報告の後は、セミナーの参加者が7〜8名のグループに分かれ、精神障害者の雇用を阻害する要因は何かということについて、坂本様やM口様、仲田様のお話も踏まえつつグループディスカッションを行いました。
 当日は、各グループ毎に司会進行とタイムキーパーを決めて、精神障害者の雇用を阻害する要因について、福利厚生、職場環境、管理者、業務内容、サポート体制といった観点から議論しましたが、どのグループも議論が白熱し、時間が足りないくらいでした。
 グループディスカッションの後は、各グループの司会進行役が議論の結果について報告し、それに対して、当協会福岡相談コーナーの西村相談員が講評とまとめを行いました(西村相談員のまとめについてはこちらの資料をご参照ください)。

 今回の九州・沖縄ブロック障がい者雇用特別セミナーについては以上です。
 当日は、この後、当協会九州・沖縄ブロック長の森田常務理事(長崎基準寝具有限会社代表取締役)から閉会のあいさつがあり、セミナーを終えました。