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ミニ情報通信

令和3年度中部ブロック 障がい者雇用支援WEBセミナーが開催されました。

令和3年9月22日(水)午後1時30分から、標記セミナーがオンラインで開催されました。

このセミナーは、全障協が厚生労働省から受託した「障害者に対する差別禁止及び合理的配慮に係るノウハウ普及・相談支援事業」の一環として開催されたものです。

最初に全障協の栗原会長から開会のあいさつがあり、その概略は次のとおりです。

1)多数の皆様に参加いただき感謝。新型コロナウイルス感染症拡大の影響が引き続くなか、皆様には障害者の雇用促進・維持や感染予防対策等にたいへんご苦労されていることと拝察する。コロナ禍の一日も早い終息を心よりお祈りする。また、7月上旬から8月にかけて、全国各地で大雨による災害が発生した。被災された方々には謹んでお見舞い申し上げる。2)全障協は、障害者を多数雇用している全国の事業所が集まって作った団体であり、令和元年度に30周年を迎えた。その節目にあたり、「重度」の概念がない「精神障害者」の雇用が増加していること等を踏まえ、昨年4月に団体名称を「公益社団法人全国障害者雇用事業所協会」に改めた。1年が経過し、新名称も徐々に浸透してきているのではないかと感じている。引き続き、ご支援を賜りますようお願いする。3)全障協は、一般企業、特例子会社、就労継続支援A型事業所など多様な全国331会員で構成され、特定の分野に特化していない唯一の全国団体である。このため、障害者雇用に関する様々な情報・ノウハウの提供や企業見学等について1団体ですべて対応できることを特色としている。4)全障協では、全国7ブロックで年2回づつブロック会議を開催しており、さらに特定のテーマごとに全国ベースの研究部会を立ち上げる取組みを進めている。また、平成29年度からは厚生労働省から事業を受託し、本セミナーのほか、全国7か所に障害者雇用相談コーナーを設置している。障害者雇用で課題等をお持ちなら是非、気軽に活用いただきたい。5)本日は、社会保険労務士法人オフィスNAKAJIMAの中島由恵様から「障害者雇用の安定した継続と障害者理解のために」と題して特別講演を行っていただくとともに、SWSスマイル株式会社業務部マネージャーの川端元様から「障がい者の個性に応じた成長のサポートと多様性を活かしたキャリア支援について」と題して事例発表を行っていただく。質疑応答やグループディスカッションの時間も用意しているので、積極的な参加をお願いする。6)限られた時間ではあるが、セミナーの内容を参考として、今後の障害者雇用に活かしていただければ幸いである。

次いで、全障協名古屋相談コーナーの萩野障害者雇用相談員の司会進行のもと、中島様による特別講演が行われ、その概略は次のとおりです。

1)一言、一手間、ワンクッション。精神障がい者とのかかわり方は、この3つのキーワードを念頭に置けばスムーズにいくのではないかと考えている。2)企業における精神障がい者の定着率は2017年のデータでは1年後に約50%、3年後には30%を切っている。当事者から見た離職理由は、「職場の人間関係」、「仕事内容が合わない」、「会社の配慮が不十分」が上位に挙げられるが、いずれも共通してコミュニケーション不足が原因である。3)コミュニケーションが取れないと、本人は意思疎通ができず、理解できないことが多くなり悩んでしまう。そのため仕事が楽しくない、意義を感じない、自分に自信が持てないとなってしまう。企業側から見れば、研修や教育等の投資が活かされず、期待していた職場の負担も増してしまう。4)コミュニケーションをとる第一歩は、相手の視点で一緒に考えていきたいという姿勢があることを相手の障がい者に見せていくということである。5)コミュニケーションの意味するところは、情報の伝達と共有であり、情報を伝達しても相手に正確に伝わっていなければ成立していないことになる。6)キーワードのうち「一言」は、明確で間違いの無いような一言を添えるということである。空気を読むなどの暗黙の了解的な部分が含まれている仕事の指示では不十分であり、しっかりと一言添えて明確に伝えることで正しく指示どおり作業が行われていくようになる。7)「一手間」は、伝えるための一手間であり、あたりまえのことを丁寧にレクチャーする、分かりきっているようなことでも敢えて再確認し、時間をかけて説明するなどである。企業側が分かりやすく易しい丁寧な日本語を使えば、解釈がずれてくることも少し軽減されるのではないかと思われる。8)帰宅後に今日一日の出来事を思い出し、些細なことをネガティブに考え始めてしまうなどにより、精神障がい者の問題は、会社外で大きくなることが多い。このような場合、障がい者が本人のことをよく知っている人に相談することができれば負のスパイラルを断ち切ることができる。9)普段の仕事の指示は直接行っていただく必要があるが、場合によっては企業側が直接、障がい者に伝えるのではなく、障がい者が信頼している組織や団体経由という「ワンクッション」で言葉を伝えていくとよいことがある。精神障がい者の雇用が安定している企業は支援施設を有効に活用しているケースが多い。10)企業が難しいのは、障がい者の方の特徴を把握することだとよく言われるが、それを得意とし、「一言、一手間、ワンクッション」にも慣れているのは福祉施設や当事者団体など様々な団体である。企業と福祉施設等が連携して助け合うことで障がい者とのコミュニケーションがとれ、働きやすくする、また、本人が働くことがうれしいと思うようにすることで安定定着につながっていくのではないかと思われる。11)発達障がい者は不登校やいじめを受けた経験を持つケースが多いといったことなどから、結果としてコミュニケーションの練習の機会が少なかったのであり、練習の機会をどんどん与えていけば、精神・発達障がい者のコミュニケーション能力は必ず向上する。12)障がいの有無にかかわらずコミュニケーションは難しいことであるが、普通のことであり、相手を思って理解しようとすればできることなので、無理なく取組んでいっていただきたい。

特別講演に引き続いてチャットを利用した質疑応答が行われ、仕事の指示の具体的なやり方等について回答をいただきました。

休憩を挟んで川端様による事例発表が行われ、その概略は次のとおりです。

1)SWSスマイル(株)は2013年5月に設立され、部品解体・分別、梱包箱清掃、緑化、書類の電子化と業務を広げてきた。2)業務社員(障がいのある社員)として、知的障がい者及び精神障がい者66名を雇用しており、そのうち約70%が知的障がい者である。また、業務社員の半数くらいに発達障がいの特性があり、一人ひとりに細かい配慮をもって対応している。3)業務社員と支援スタッフ一人ひとりが成長を実感でき、働きがいのある会社づくりが課題と考え、2017年度以降、厚生労働省が主催する「グッドキャリア企業アワード」に挑戦し、2021年に大賞(厚生労働大臣表彰)を受賞した。4)当社では5つのプロジェクト(安全PJ(リスクの顕在化)、挨拶PJ(PR活動)、笑顔PJ(楽しさの共有)、新規業務拡大PJ(仕事量の確保)、個人の成長PJ)を設置し、1〜2か月に1回の割合で各課題に取り組んでいる。5)今回のグッドキャリア企業アワードについては、「個人の成長PJ」において業務社員の人材育成を課題に取り組んだ。6)個人の成長PJの活動事例としては、まず、業務社員の成長プログラムがあげられる。これは、業務社員の作業能力判定・行動評価をスキルマップや個人評価表で個人別に行うとともに、さらに面談シートを事前作成のうえ年1回個人面談を行うものである。 面談では、現時点での困りごと、今年1年頑張ったこと、来年挑戦してみたいことなどが話し合われる。その効果として、スキル、行動評価を見える化し、毎年、成長したことを共有したり、業務の固定によるマンネリ化を避け新規業務の取り込みが行える多能工化を図ることが可能となるといったことがあげられる。7)2019年度からは、日頃から模範行動的な言動により周囲に影響を与えた社員を表彰することとしている。そのねらいは、働く意欲の向上、社会人としての更なる資質の向上を図ることである。効果として、スタッフが業務社員の特性を観察し、習慣化された行動の長所に目を向け伸ばすことができる仕組みとなっていることがあげられる。いろいろな社員が表彰され、2018年12月以降は退職者も発生していない。8)2019年度から、スキル、知識習得促進のために14種類の資格手当を設定した「資格取得支援制度」により、スタッフ、業務社員の成長を支援している。2019年度は延べ16名が手当を受けている。制度の効果としては、毎年スキル確認を行うことにより業務品質が確保されていること、スタッフがスキル等を設定し指導・達成することがスタッフ、業務社員の目標になり、双方の働きがいにつながっていることがあげられる。9)業務社員の困りごとや業務社員目線での作業のやりやすさの観点からスタッフが改善を図ることで働きやすい職場環境づくりを推進している。10)製造部門での経験が30年以上あり、ノウハウの伝承ができ、良き相談相手となれるシニア社員と、面倒見が良く、柔軟な発想ができる女性社員による障がい者支援を推進している。その効果として、シニア社員の経験が活かされ、女性のキャリア形成の場の1つともなる、障がい者が活かされる多様性に富んだチームづくりができている。11)今後の課題としては、現在の管理補助的な業務から、モノづくりの一端を担えるような業務に挑戦することをその1つとしている。業務受託に際しては、障がいへの配慮、改善、訓練、訓練後の聞き取り、意欲の確認等を時間をかけて行っている。各人のできる、できないは別にして、まずは全員に声をかけ挑戦させてみることにしている。このように、製造部門と業務社員との接点を増やし、細かな業務の切出しを継続することを目指しており、まだまだ途中だが、課題を1つずつクリアしていきたいと考えている。12)もう1つの課題は、PR活動の推進であり、情報発信媒体を通じた啓発や積極的な見学者・実習生の受入れ、社内外に対する障がいへの理解促進の働きかけにより、多様性を受容する社会づくりに貢献することと、優秀な人材の確保につなげることである。誰にとっても働きやすい共生職場を目指し、更にSDGsに向け障がい者が継続的に活躍する場を働きかけていきたいと考えている。

事例発表の概要は以上のとおりであり、続いてチャットを利用した質疑応答が行われ、業務拡大の具合的方法、コロナ禍での業務の状況等について回答をいただきました。

その後、休憩を挟んで名古屋相談コーナーの坂下障害者雇用相談員がファシリテーターとなりグループディスカッション及び各グループのディスカッション結果を持ち寄った全体質疑応答が行われました。

最後に、大西中部ブロック長から閉会のあいさつがあり、その概要は次のとおりです。

1)中島様、川端様には、たくさんのとても貴重なお話を賜り感謝申し上げる。お話をお聞きして、社員の可能性を信じて諦めないということが重要であろうと考えていた。また、お忙しいなか参加いただいた皆様にお礼申し上げる。2)本日のセミナーで講師からいただいた貴重な知識、経験談、事例等を職場に持ち帰っていただき、是非、今後の障害のある方の雇用に役立てていただきたい。3)もし、困りごと等があれば、全障協名古屋相談コーナーへ気軽にお問い合わせたいだければ、電話、メールの相談のほか、伏見の事務所では相談員と直接ご相談いただくこともできる。4)また、全障協に加入いただくと中部ブロック内でのネットワークができるとともに、オンライン等により全国の会員会社と情報交換等を行う機会も格段に増えているので、是非ご活用いただきたい。5)皆様が障害のある方の継続的な雇用、また、安定した経営を進められて、働くすべての人々に安心が訪れることを祈念して閉会の挨拶とさせていただく。