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ミニ情報通信

令和2年度近畿ブロック オープンセミナーが開催されました。

令和2年12月14日(月)午後2時から、標記セミナーがオンラインで開催されました。

このセミナーは、全障協が厚生労働省から受託した「障害者に対する差別禁止及び合理的配慮に係るノウハウ普及・対応支援事業」の一環として開催されたものです。

最初に全障協の栗原会長から開会の挨拶があり、その概略は次のとおりです。

1)新型コロナウイルス感染症の影響下にあって、皆様には、障害者の雇用促進・維持や感染予防対策等にたいへんご苦労さてれいることと拝察する。新型コロナウイルス感染症の一日も早い終息をお祈りする。2)全重協は本年4月1日から全障協に名称変更し新たなスタートを切った。引き続き、ご理解・ご協力をお願いする、3)全障協は一般企業、特例子会社、就労継続支援A型事業所など多様な会員で構成されており、障害者雇用に関する様々な情報・ノウハウの提供や企業見学等について1団体ですべて対応できることを特色としている、4)厚生労働省からの受託事業として、本セミナーの他に、全国7か所に設置した障害者雇用相談コーナーにおいて相談支援を実施している。是非、気軽に活用いただきたい、5)本セミナーでは、新型コロナウイルス感染症の影響下にある現況を踏まえたテーマを設定しているので、是非参考にしていただきたい。

次いで、天井全障協常務理事(近畿ブロック長)の司会進行のもと、プログラムが進められ、まず、「経営と雇用の両立を考える取り組みについて」と題して、楽天ソシオビジネス株式会社代表取締役社長の川島 薫様から講演いただきました。その概要は次のとおりです。

1)当社は2007年12月5日に設立された、楽天株式会社の特例子会社である。障害者に成長の機会を提供することにより社会貢献をすることを理念に、現在、185名の障害者を雇用しており、雇用率は2.31%となっている。2)設立当時のハローワーク求人票では、業務内容を「一般事務作業」、応募条件を「パソコンのキータッチができる程度あれば可」としていた。3)戦力となる社員を育て業績をあげるためには、会社の目指すところを共有する「意識の統一」が必要である。4)2012年黒字化を決意表明して独立採算制とし、業績アップにより給料もアップする、成果報酬が得られる会社にすることを目指した。そのためには、能力発揮の機会を提供することが必要であった。5)いろいろな人達が働ける会社にするために、2011年に新卒採用(大学生)を開始した。その後、会社内でジョブコーチを育成した。6)会社設立当初は身体障害の方が多かったが、社会の変化とともに精神・発達障害の方の入社が増加し、2016年に「精神・発達障がい者トレーニング室」を設置した。その後、2017年から精神・発達障害の方の採用を本格化した。7)支援機関との関係性がなかったことや、仕事のミスマッチ、障がい特性の理解や知識不足といった課題を解消するため、有資格者(精神保健福祉士)による専門の定着支援グループを発足させた。的確なアセスメントが定着につながることから、この定着支援グループは、知的障害と精神・発達障害で担当を分けている。8)採用に向けた10日間の実習では、会社に来れるかどうか、コミュニケーションができるかどうかをみている。就労可能との見極めができれば、その後、3か月間のトライアル雇用に移行する。トライアル雇用の前半1.5か月は、適性を見る、会社に慣れる、会社のルールを覚えることを目的としており、後半1.5か月ではアセスメントとマッチングを行う。また、トライアル雇用中に自分で最低5人ランチに誘うことを宿題としている。9)定着支援グループ発足後の雇用実績(2017年から現在)は、エントリー388名、採用71名、退職10名となっている。定着支援のためのサポート体制としては、パートナースタッフ1名が3名のサポートを行っており、今後、SPISを導入予定である。10)人事評価制度としては、上期と下期の年2回評価を行っており、途中3か月ごとに振り返り面談を実施している。評価項目は、挑戦、成長、自立、共生の4点である。評価は4段階としており、できていると思ったら3、自分だけではなく周囲もできるようになったら4としている。また、社員に求められる21の期待行動と17のビジネスマナーを示している。11)配属先は、障害種類別で考えるのではなく、個々の適性に応じて決めている。12)2012年の改革宣言以降、「自分たちでできる仕事を探しに行く」という発想で取組み、人事関連業務、会場設営や来客のアテンドなどの総務関連業務、サイトパトロールなどの事業関連業務、コンビニエンスストアやベーカリーカフェなどのショップや植物工場の運営へと業務を拡大してきた。これにより、2011年には単月黒字となり、2019年の年間売上は13億円を超えることとなった。会社の業績情報は社員も共有するようにしている。13)コロナ禍の中で、楽天鰍フ社員が出社しないことも影響して売上はかなり減少した。例えばカフェ等は4〜5月休業し、6月に再開している。14)こうした中でも、デスク・パーテーションのアルコール消毒、執務エリアの巡回等、コロナ禍で発生する各種業務にも積極的に対応し、業績回復の努力を行っている。

(川島様のお話の詳細は、こちらの資料をご覧ください。〔本資料の無断転用・ネット掲載を禁じます。〕)

 

講演に引き続いて株式会社あしすと阪急阪神 常務取締役の冨田浩平様から、「知的障害のある社員が、トイレに物を詰めるという行動に対する取組み」、「発達障害のある社員が、特定信書便業務(定期連絡便)を習得するためのサポート」など6事例について具体的な報告がありました。

その後、グループディスカッションが行われ、最後に大本全障協副会長から閉会のあいさつとして、1)新型コロナウイルス感染拡大の中で、初めてオンラインでセミナーを開催した。2)川島社長、冨田常務には貴重なお話をいただき感謝申し上げる。障害者雇用と経営の両立は一見、ハードルが高いように見えるが可能であり、両者のバランスの取り方についてたいへん参考になった。また、事例報告には勇気づけられた。3)次回は、さらにお役に立てるセミナーとなるように努力したい、との話がありました。