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ミニ情報通信

令和元年度上期東北ブロック会議が開催されました。

去る7月18月(木)午後1時30分から、仙台市青葉区のホテルJALシティ仙台において標記会議が開催されました。

最初に栗原会長があいさつされ、1)会員も増え全重協の知名度が上がっているのは会員の皆様のおかげであり感謝申し上げる、2)全重協の名称については、「重度」がネックとなり入会を躊躇される場合があること、精神障害には「重度」の概念がないこと等を踏まえ、平成元年の公益法人化から30年経過したことを期に変更することとなった。定款の改正が必要なため、来年4月から「公益社団法人全国障害者雇用事業所協会」とし、全重協の正式名称から「重度」という言葉をとって略称も「全障協」とすることが決まった、3)厚生労働省からの受託事業も3年目を迎え、理事会では、今後は少しやり方を変えた方がよいのではないかとの意見も出ている。来年度以降のやり方については、もう少し違ったものを厚労省に提案していきたい、4)先の理事会では最低賃金の上昇への対応が議題の一つとなり、賞与を給与に組み替えたらモチベーションが下がった、4月・10月に行っていた昇給を一本化したなど様々な現状が報告された、といった話がありました。

続いて本部報告として、1)先の通常国会で障害者雇用促進法が改正され、障害者の活躍の場の拡大に関する措置、国及び地方公共団体における障害者の雇用状況についての的確な把握等に関する措置が設けられた、2)厚生労働省からの受託事業として実施している障害者雇用相談コーナーの周知について、会員の皆様にもご協力いただきたい、また、3)会員の皆様ご自身も気軽に相談コーナーをご利用いただきたい、4)同じく厚生労働省からの受託事業として実施している障害者活躍企業の認証については、この6月から8月末まで申請を受け付けているので積極的に検討いただきたい、5)これまでのブロック会議や都府県支部会議のような地域毎の会員の集まりに加えて、今後は、A型や精神障害者、助成金といった特定のテーマ毎に全国の会員にご参加いただく研究部会を設けることを検討している、6)昨年度は、会員からの寄付が減ってしまったので、今年度は積極的なご寄付をお願いしたい、といった話がありました。

その後、出席各社の自己紹介が行われ、休憩をはさんで宮城障害者職業センター主幹障害者職業カウンセラーの相澤欽一様から「精神障害のある人が就労するために必要なサポートとは」と題して講演をいただきました。講演内容の概要は以下のとおりです。

1)全国ハローワークの障害者窓口における精神障害者の紹介就職件数は、2008年度の9,456件から2018年度の48,040件に急増している。ただし、1年定着率は5割以下で、職場定着が課題になっている。2)「精神障害者」という言葉は、国内の法律間でも定義が異なる。一般的には、精神保健福祉法で定義されるように精神疾患を有する人を精神障害者ということが多いが、障害者雇用促進法では、症状が安定し就労が可能な状態にあるものの内、@精神保健福祉手帳所持者、A統合失調症、そううつ病(躁病及びうつ病含む)、てんかんにかかっている者を「精神障害者」と定義し、雇用率に該当するのは@のみである。3)精神保健福祉手帳は発達障害を含む様々な精神疾患を対象に交付されており、「精神障害者」というだけでは対応方法は分からない。また、同一疾患でも、症状や重症度、発病の時期や経歴、元々の性格や能力、置かれている環境等によりその状況は異なる。このため、個別対応が求められる部分も多いが、多くの人に共通する事項とそれに対する基本的な対応として次のようなことが考えられる。@病気と障害が併存⇒通院の確保、疾患や障害の理解促進・セルフケアの向上、勤務時間や仕事量など環境調整によるストレスの軽減、医療と就労支援の連携。A中途障害や精神疾患に対する無理解⇒発症後の能力低下、退学や失業、周囲の不適切な対応などのマイナス体験⇒自信喪失や自尊感情の低下⇒「強み・長所・できていること」に焦点を当てた自信の回復と可能性を拡げる支援。B認知機能の低下が疑われる場合⇒課題や仕事の標準化・簡素化、認知機能の特徴に応じたコミュニケーションの工夫。4)障害者の雇用管理を適切に進めるためには、@障害者雇用の理解を深める、A従事職種・配置部署の検討、B受け入れ態勢の整備、C採用活動、D職場定着を図るという5つのステップを踏むことが望まれる。5)Dの職場定着を図るために以下のようなことに留意する。仕事を教える際は、指導者を配置し、やってみせ、わかったか確認しその後にやらせてみる。指示は、具体的に、誤解の余地なく、タイミングよく、一度にたくさん言わない。「適当に」「きちんと」などの漠然とした指示は避ける。できたことはほめミスに対しては具体的な対応策を一緒に考える(頭ごなしの叱責や感情的な言動はNG)。仕事に慣れてきたら、本人の状況に応じて指導する。障害のある人を指導する立場の人も自分の仕事を抱えながら指導する場合も多いため、障害者の指導を現場任せにせず、指導する人をバックアップする。チェックリストなどを活用して定期的に面接し本人の状況を把握する、数ヶ月サイクルで目標管理を行うなど十分にコミュニケーションをとる。就業時間や職務内容の変化、上司や同僚の異動など本人を取り巻く環境に変化があったときは必要に応じて支援機関に連絡し、本人が不安やストレスを抱えていないか確認する。6)雇用管理の基本としては上記5)のような点を留意することになるが、「精神障害者」は一人一人異なるため、実際の雇用管理では、本人の個別性を把握し、個別性を踏まえた対応が望まれる。ただし、本人の個別性を把握するには時間がかかるため、本人をよく知っている外部の支援機関を活用するとよい。なお、精神障害のある人が安定した職業生活を送るためには、自分自身の病気の特徴、苦手な場面、調子を崩すときのサインや調子を崩さないための工夫、企業に望みたい配慮事項などを整理できていることが望ましい。本人がこのような視点で自分自身の特徴を整理できるよう支援している支援機関と連携すれば円滑な雇用管理の可能性が高まる。7)本人が体調不良になった場合、企業としてどのような対応をすべきか医療機関から情報を得たいと思う場面が出てくることがあるかもしれない。その際は、医療機関には守秘義務があることや提供した情報のために本人が不利な取り扱いをされないか不安に思う場合があることなどに留意する必要がある。医療機関に情報提供を依頼する際は、本人を通じて行う、企業は本人の職場定着を願っており、本人のためにどんな対応が望ましいか知りたいから情報収集するということが明確に伝わるようにする、(診察室だけの情報で医師が判断するには限界があるため)普段の仕事ぶりや調子を崩してからの職場での状況などを分かりやすく伝える、産業医などの医療職を介しての情報交換や支援機関が関わっている場合は支援機関を活用するなどに留意するとよい。

講演に引き続いて、障害者と同行する支援者との間の関係性が十分ではない場合の対処方法、採用面接の際の留意点、就労支援機関とのパイプの作り方等について熱心な質疑応答が行われました。

講演内容はたいへん実践的なものであり、精神障害者の雇用に取り組もうとする全重協の会員企業にとっても大いに参考となることでしょう。